ジェニファー:プリシラコーチの元で、そしてまたニックスコーチの元で、あなたのスケートは変身(トランスフォーム)を遂げた。このトランスフォームは、どうやって起きるのか、教えて。
アシュリー:どうやってトランスフォームしたか、か。これを聞かれるのは600回目で、もうどこにも、トランスフォームするところは残ってないよお(笑)。
ううんと、自分に関して言えば、私は、生来的に、優雅さをいうものを持ち合わせておらず、人に頑張れって言われ、その通りに努力していく、そんなタイプの選手なんですよね。
よく、トランスフォームしたね、と言われるのは、例えば、スケーティングがよくなったとか、振付をこなせているとか、一試合で両足着氷になる回数が減ったとか(笑)、きっと、そういうことなんだと思うんだけど。コーチや振付師が新しくなると、つい、それだけで急に上手くなるとか、スケートが変わるとか、そう人は期待しちゃうんだけどね。
それは、新しい環境のなかで、たまたま、それまでとにかく一生懸命やってきたことが表に出てきた、ということだと思うんです。新しいコーチ、振付師に会って、その元で、一生懸命やるだけです。
デビッド:2010年のショート(Once Upon a Time in America)の背中を反らす振付ですが、あのような優雅さも、生来的なものではないのですか。
アシュリー:違いますねぇ。普段こんな風に、体を動かしたりしたりしてるけど、それは生来的なもの、とは言わないでしょう。
ただ、自分を次の高みに引き揚げてくれる指導者の元、常に成長をしたいと願っています。音楽表現とか、身のこなしかたも含めて。
“アシュリー・ワグナー TSLインタビュー (2013/7/24-英語)” への33件のコメント
普通のアメリカ人お嬢さんと言う感じですな。
美人でフィギュア選手には珍しく苦労人だし。
いい感じですよ。
美少女がバラエティー番組に出てるみたいな感じ!
アシュリー面白い!
管理人様、動画アップありがとうございます。
とても面白くて、素のままのアシュリーがみれたので、少しずつ翻訳をしたいと思います。
*******
デビッド、ジェニファー:みなさん、お待ちかねのアシュリーワグナーさんが今日はゲストです。いろいろ私たちにぶつけてくるでしょうね。
アシュリー:ずっとこのスケートレッスンを見てきましたよ。やっとお声がかかって、ついに私の番ですね!
デビッド:この番組ではいろいろアシュリーのことを言っている、と巷で言われておりますが、アシュリー、私たちについて、何か言いたいことはありますか。
アシュリー:あなた達ねぇ、ほんと余計なお世話よ、ってこといろいろ言ってくれてるわよね(笑)。私のお母さん、モリッサ・ワグナーは、まあ、あまりスケート界では知っている人はいないでしょうが、すっごくおっかないヒトなんだけど、私はそのお母さんとだってうまくやっているの。だから、あなた達に何言われたって全然どうってことないのよ。
それと、ジェニファー、もういい加減に、Big Spender をやれ、っていうの止めていただけませんですかねえ。あの、サーシャ・コーエンがやったプログラムについては、私もう充分やったんだから。
(ジェニファー:いや、あなたなら、いろいろ小生意気ないい味を付け加えることができると思って)
アシュリー:とはいえ、ちょっと小生意気なことを言わせてもらいますと、あなた方は、スケートについてもよくご存知で、わかった上で発言をされていますね。この世界でこれまで活躍されてきた人たちですもの。これが、crazy cats ladiesみたいに、家でパソコンに向かって「最近、アシュリーの脚は太くなったわよね」とか書き込みしているヒトとは違いますからね(笑)
ジェニファー:私たちはみんなあなたのスケートのファンなのよ。アシュリー。
アシュリー:まあ、私もまたあとで違うこともいうかもね。
デビッド:お友達のアダムリッポンが、シャーリー・ヒューズについていた時代のアシュリーはカールしたポニーテールが似合って可愛かった、あの頃に戻るべきって言ってますね。
アシュリー:あのね。今の私の髪もカールしているのを見てわかってもらえるかと思うけど、シャーリーは、あの頃は、女の子はみんな髪をカールしなければ、真剣になってもらえない、と言ってたのよ。
デビッド:では、いつも一緒に練習も、いたずらもやっているみたいなアダム・リッポンについてお聞きしたいのですが。
アシュリー:今日は、自分のことを話すつもりで用意してきたけど、アダム・リッポンについて聞かれるとは思わなかった。
ジェニファー:私たち、ゴシップ好きだから。
アシュリー:アダムリッポンは、とても大切な人です。ずいぶんと長い時間を一緒に過ごしてきました。分かってもらえると思うけど、スケートの世界では、ひとたび絆のようなものが出来上がると、それは一生続きますよね。兄弟に対する愛、みたいなものかな。彼はとっても、きれい好きで、何か悪口を言うところも見つからないんだけど。。。。
あ、そう、彼の金髪の髪の毛について。アダムリッポン、あの子はSun-Inを使って髪を染めようとして、私が「そんなんじゃ、ちゃんと髪は染まらないよ」って注意したの。数日会ってなくて、Skate for Hopeかなにかのとき会ったら、(ターゲットで買った金属を見せて)こんな安っぽい金色になっちゃてるの。
あと、あの髪型で、一時期、サイドは短く、トップのところだけがくるくるしてるときがあったけど、あれは、カーリーヘアとしては、失敗の時代だったよねえ。「アダム・リッポンのトレードマークはカーリーなんだから」、髪を短くしても、少しカールが残るように言ってあげたのが私。
ジェニファー:最近、ラファエルアルトニアンにコーチ変更となりましたが、なぜ、彼を選んだのですか。
アシュリー:いろいろな要素が組み合わさって、彼にみてもらうことになりました。
ニックス先生ははいずれは退職されるという可能性については分かっていたものの、大丈夫、まだ見てもらえるだろう、と思っていた矢先、ニックスから「遠征にはもうついて行かないよ」と言われて、さあ、何か大きな変更をしなくてはいけないのかな、と選択を迫られました。何人かコーチとなる人を探しましたが、カリフォルニアには、友人、スケート以外の世界、という点も含めて、生活の基盤がここにできているので、他は考えられなかった。
自分に何が必要か、といえば、技術的なものをみてもらうことだ、と分かっていたので、技術を教えることに絶対の定評のある、アルトニアンコーチにみてもらうことにしました。
あなた達にも言われてましたが、3-3のジャンプ。前シーズンは、やるわよ、といっておいて、実際試合では飛ばなかった。今季は、これをしっかりやりたいと思っています。そのために、アルトニアンは大切なコーチです。
スケーターには、ジャンプを技術で跳ぶ選手と、フィーリングで跳ぶ選手がいますが、私は後者のほうです。どちらでもいいと思うのですが、それでも技術の部分はとても大切で、試合では特に、プレッシャーがかかったり、力が入ったりして、練習通りには行かないときもあります。ですから、技術的なベースをしっかりして試合に臨めるようにしたかったんです。
それ以外にも、アダム・リッポンや練習仲間がいた、というのも理由ですね。
ジェニファー:実際、数ヶ月練習をしてみてどうですか。どんな指導をどんなかたちで受けているのですか。
アシュリー:嬉しい驚きがいっぱいですね。最初は、会ったこともないし、しゃべったこともないし、ロシアのコーチにならったこともない、どうしようと不安だったんです。でも、会ってみたら、体は大きいけれど、とっても可愛いひとで、テディ・ベアみたいなひとです。
まず、自分のジャンプや、どういういう風に練習をしているのかを見てもらいました。自分の傾向として、例えばフリップを跳ぶときも、トゥを強く蹴ることがあるのですが、試合ではそれではうまく行かないこともあり、アルトニアンコーチは、もっと落ち着いて、入りのところをスムーズに、力を入れないように跳べるよう、指導してもらっています。それはとても良かったですね。
指導の仕方なんですけど、もちろん言語のバリアの問題もあります。私は、英語にアクセントにある先生にならったことがなくて意思の疎通と言う点で、最初は苦労しました。でも、彼のやり方というのは、面白くて、例えば先生が「君は、ダーダーダッダーダー、ってやるけど、そうじゃなくて、ダーダーダーダッダってやって欲しい」とか言われて、なんのこっちゃと思ったりしたこともあるけど、今では、言われたようにとりあえずやってみて、直してもらっています。毎日、試行錯誤、勉強の日々です。
*****************
(五輪代表とならなかった、全米のときの話が次に続きます)
デビッド:アシュリー、あなたが注目されだしたころは、ちょうど、キャロライン・ジャンやナガス・ミライが脚光を浴びだしたころで、その隙間を縫って私たちの視野に入ってきたわけだけど。2009年のジュニアワールドの表彰式では、2位のキャロライン・ジャンと握手もしなかった、と話題になったよね。
アシュリー:よくぞそのハナシを持ち出してくれたわねー(笑)。
デビッド:一番記憶に残っているのは、なんといっても、全米のフリーのNBC放送のとき、サーシャ・コーエンの演技の後、カメラがとらえた、あなたのアップ。あのときの表情は。。。
アシュリー;冴えなかったよね。もちろん、自分の前にTVカメラが来ていて、自分の顔が大写しにされるということも気づいはいたんだけど、自分の五輪行きが危なくなったと分かっていて、彼らの存在は目に入らなかった。
ただ、なんて表現していいのかわからないけれど、スポーツマンとして、いかに醜く見えるかってことに、気づかなかった。サーシャ・コーエンがことごとくジャンプに失敗して、脚がこんな風に、バンビみたいにな形で、ランディングしているのをみて。あんな興奮した顔を見せてはいけないんだってことに思いも至らなかった。18歳のあの時点では、どんな風に自分がテレビカメラ写るかってことも分かってなかったんだよね。
自分が五輪の代表にはならないだろうと知ったときみんなの見た私のリアクションなんだけど、あれはまさしく自分の気持ちの表れだったと思う。誰か他の人が私の立場にいたら、気丈に笑顔を見せて振舞っていたかもしれない。でも、あのとき、自分はおそらく五輪代表には選ばれないと思い、本当にがっかりしていた。がっかりしていたのは自分のショートプログラムについて。他の誰のせいにしていたわけでもなく、たった一回のショートの転倒で、自分をオリンピック代表チームから外したジャッジに腹を立てていたわけではないんですけど。
自分の中から湧き出る気持ちを隠せなかった。確かにあの夜の自分はよくなかった。
デビッド:そうした貴女の率直さが好きです。
デビッド: その後、誰かから、例えばスケート連盟から何か言われましたか。テレビの前であんな顔するんじゃないぞ、とか。
アシュリー:さっすがに、彼らは何も言わないでしょう。(五輪の代わりに)ジュニアワールドに派遣してあげる、と言っていたくらいなんですから(笑)
ジェニファー:五輪のシーズン、アシュリーはグランプリシーズンで2度メダルをとるなど、いい成績を収めていました。だから、全米でも自信がありましたか。
アシュリー:私は現実的でした。強力なライバル達が立ちはだかっていることは理解していたから。彼女たちは3-3を跳び、片足できっちっとランディングもできてましたから。だから自分が勝つには、ショート、フリーともきちんとミスなく滑らなくてはいけないと分かってました。
そう、ショートに関しては、力が入りすぎ、後半転倒してしまった。
全米に臨むとき思っていたのは、「自分が五輪代表になる可能性はある」でしたが、ショートが終わったあとは「代表になれない可能性もある」と思うように変わりました。
ジェニファー:あの頃コメンテーター達は「アシュリーは五輪に出たいという気持ちが強すぎた」と言ってましたよね。どう思いましたか。
アシュリー:たしかに、五輪に出たいと、強く願っていた。よく人が「あんまり強く願いすぎると、その願いは叶わなくなる」と迷信みたいなことを言っているのを聞いて、自分は「なんでそんなことがあり得るのよ」と思ってました。
そうですね。普段はそんなに高くジャンプを跳ばない。
でも、あの時は。。。「これがオリンピックへのジャンプ」って力が入って、気づくと、どこに氷があるのか見えなくなっていた。
自分は勢いで押していくタイプですが、いまより若い18歳のあのとき、それを抑え切れなかったと思う。
情熱、勢いそういったものを試合でコントロールするのが自分の課題ですね。
デビッド:復活するのに、どれくらいかかった?
アシュリー:ううん。実はあのシーズンは率直に言って、自分はよくやったと思っている。たしか、グランプリファイナルに行けた米女子は私だけで、グランプリシリーズを通じて調子がよかった。
例外かもしれないけれど、そういったことも代表選考には考慮してもらえるかと期待した。唯一自分が成し遂げられなかったのは、全米でトップ・ツーになれなかったことだけだし。
フリーが終わって、全ての結果が出るまでの気持ちは、五輪にはおそらく行かせてもらえないだろう。だけど、全米でも、ショートの1回のミスはあったけど、それ以外はきちんと滑りきったし、シーズン通じて成績はよかった。だから、五輪には行かせてもらえないけれど、世界選手権には派遣してもらえるだろう。そうしたら、世界選手権に行けることで、自分はそれでよし、としよう、そう覚悟を決めていました。
で、蓋を開けると、ジュニアワールドへの派遣の決定。思いっきり正直に言って、あの時は、横っ面をひっぱたかれた気持ちでした。
それでも、気持ちをしっかりもたなくちゃ、と家に帰り、ジュニアワールドでも頑張ろう、自分を五輪代表に選ばなかったことをみんなに後悔させてみせよう、そう一度はと思ったんだけど。。。いざ、練習を始めてみると、今自分が滑るのは「ジュニア用のフリープログラム」なんだと思うと、精神的、感情的、体力的にきつくて、どうしても最後まで通して滑れなかった。
結局、大会1週間前に辞退をしてしまいました。それが正しいことではないと分かっていましたが、あのシーズンはもういっぱいだった。
その後のシーズンですが、ひどいものでしたね。全米(2010-2011シーズン)に出て、これまでで最低の結果となりました。
立ち直るきっかけが訪れたのは、その全米の後です。その夜それまでのことを振り返り、さあ、自分としてはどうするんだ。このまま五輪に行けなかったことをくよくよし続けるのか、それとも次の2.3年頑張って、次の五輪代表はアシュリーだ、アシュリーこそが代表に相応しいと評価してもらえるようもう一度やってみるのか、決心しなければならない、そう考えました。
その年の全米で、五輪代表に選らんでもらえるには、遠いところまで自分は落ちてしまった、そういう厳然たる現実を突きつけられたこと。それからですね、立ち直ろうと思えたのは。
***********
(この後、プリシアコーチ、ニックスコーチの話が続きます。)
長々と翻訳ご苦労様です。有難うございます。
わたくしめの拙い英語力では理解は5割程度かな。参考になりました。英語の勉強にもなりそうですね。美人が教材だし。
蛇蔵さま、
読んでるヒト、いないかも、と思いつつアップしていたので
コメント嬉しいです。
アシュリー、ノリノリで話してますよね。
まだこの後も続くのですが、少しずつやっていきます。私もすごく勉強になり、楽しいです。これからもよろしくお願いします
ありがとうございます!
意味わからなかったところありましたので、大変助かります!
面白さ再認識しました!
JJさま、
ありがとうございます。励みになります!
自分も、口語表現の理解が苦手です。 なんとか、アシュリーの人柄が伝わればいいなあ、と思っています。
続き。
(プリシラコーチについての話)
デビッド:プリシラ・ヒルコーチはとても自由な精神の持ち主に見えます。どんなコーチですか。彼女に習うことで、どのようにスケートは変わりましたか。
アシュリー:プリシラコーチのこと大好きです。でも。。。なぜ私が彼女の元を去ったかについては自分は、彼女にきちんと伝えられていないのではないかな。それだけ、五輪代表に選ばれなかったときのあの時は、辛かったから。
彼女は、変わり者です(笑)。自由な精神の持ち主です。2009年の私のフリープログラムのときの彼女の毛皮を覚えていますか。虹色に染めてましたよね。プリシラって一言でいうとどんな人と聞かれたら、あのプリシラが全てっていうかな(笑)
彼女の指導は、今その選手が持っているものをうまく活かすことを大切にしています。ちなみに、アルトニアンコーチは、「自分はこれまで何百回もこう指導してきた。本来、こうやってやるべきなんだ」と指導するコーチです。
プリシラコーチの指導のおかげで、自分のジャンプは国際大会でも戦えるレベルに引き揚げられたんだと思っています。また、Irina Romanovaのおかげで、表現力も身に付き、「少女のスケート」から「大人のスケート」に変わることができたんだと、そう思っています。あの、シャーリー・ヒューズのポニーテールの時代から(笑)。
ジェニファー:プリシラコーチの元で、そしてまたニックスコーチの元で、あなたのスケートは変身(トランスフォーム)を遂げた。このトランスフォームは、どうやって起きるのか、教えて。
アシュリー:どうやってトランスフォームしたか、か。これを聞かれるのは600回目で、もうどこにも、トランスフォームするところは残ってないよお(笑)。
ううんと、自分に関して言えば、私は、生来的に、優雅さをいうものを持ち合わせておらず、人に頑張れって言われ、その通りに努力していく、そんなタイプの選手なんですよね。
よく、トランスフォームしたね、と言われるのは、例えば、スケーティングがよくなったとか、振付をこなせているとか、一試合で両足着氷になる回数が減ったとか(笑)、きっと、そういうことなんだと思うんだけど。コーチや振付師が新しくなると、つい、それだけで急に上手くなるとか、スケートが変わるとか、そう人は期待しちゃうんだけどね。
それは、新しい環境のなかで、たまたま、それまでとにかく一生懸命やってきたことが表に出てきた、ということだと思うんです。新しいコーチ、振付師に会って、その元で、一生懸命やるだけです。
デビッド:2010年のショート(Once Upon a Time in America)の背中を反らす振付ですが、あのような優雅さも、生来的なものではないのですか。
アシュリー:違いますねぇ。普段こんな風に、体を動かしたりしたりしてるけど、それは生来的なもの、とは言わないでしょう。
ただ、自分を次の高みに引き揚げてくれる指導者の元、常に成長をしたいと願っています。音楽表現とか、身のこなしかたも含めて。
ジェニファー:プリシラコーチは、技術的な指導もさることながら、とても情の厚い人であると聞きました。
アシュリー:そうなんです。こんないい人は世の中に、いないってくらいに、思いやりに溢れた先生です。ただ、それが同時に、彼女の致命的な欠点、ともいえるかもしれません。
彼女と私の関係はとても密接なものになっていて、事実一緒に暮らしていたこともありました。
ちょうど、あれやれ、これやれと口うるさくいう両親から離れてみたかった時期で、親元を離れた自分にとって、彼女は母親の替わりになってくれて、私もそれを望んでいました。だけど、ひとたび、自分の足で立てるようになると、自分でいろいろ決めたくなり、例えば「フリーのプロはこれにしたら」とか言われると「ええっつ!そんなのやりたくないよ」とか思うようになったりして。自分でも、こんな態度をコーチにとるって、よくないよなあぁ、と思うこともありました。
彼女との関係の最後のほうには、彼女の存在が母親のようなものになってしまい、厳しく、堅実なコーチではなくなってしまった。
デビッド:2011年のシーズンですが、成績は芳しくなかったですよね。心臓や筋肉の痙攣、全米当日には、病み上がりでマスクをつけてやってきた。その結果6位で、3年連続、世界選手権の出場を逃す。このとき、もうやめよう、なんてことは思わなかったの?
アシュリー:あー、あのシーズンは最悪だった。どの選手にも、振り返ってみるとよくないシーズンってあるかと思うけど、あのシーズンは、ショートの衣装を8回も変えたりと、とにかくぐちゃぐちゃでした。あは。
全米にはマスクかけて現れ、演技もひどかった。終わったあのときは、「もう競技やりたくない。早く飛行機乗って家に帰りたい」っていう気持ちだった。この競技が嫌だ、と自分がそう感じていることに気づいた、そのときなんです。私一体どうしちゃったんだろうって。スケートは自分にとって全てで、あんなに愛していたのに、何がいけなかったんだろうって。一歩引いてと反省しました。一緒に練習する人、練習場所を見直しました。
よく、学校も行かず、この競技に打ち込みながら未だ結果を出せない20代の子たちに対して、もう諦めて、学校に行くなりもっと自分にとって実のあることをやりなさい、って言う大人がいるんだけど、自分はそういう人には絶対になりたくないね。
あの時、私は自分は、うん、あと1年、あと1年頑張って全米チャンプを目指そう。それでも駄目だったら、やめよう、そう思いましたね。そうやって発想を変えました。
**************
(この後、ニックスコーチの話が続きます。)
ジェニファー:2011年、コーチをジョン・ニックスに変更された理由は?
アシュリー:自分のトレーニングが効率的でないと感じてました。プリシラコーチに見てもらってましたが、自己流のトレーニングの域を出ていない、と思い始めたのがきっかけです。
自分としては、あまり近しい関係になれない人を、コーチとして選ぶべきではないかと思いました。居心地が悪いと感じるときほど、自分は伸びると。そんなときニックスコーチが、そこで浮上してきました。他の有名なコーチは、すでに別の選手にとられてしまっている、というのものあったのですが。彼に私から電話をして、練習を見てもらえるよう、OKをもらいました。実際、彼に会ってみた印象は、とても存在感のある人、というものです。知識が豊富で、彼の言葉は、41回も全米チャンピオンをつくりあげたことからも分かるように、実績に裏付けられており、重みがありました。
彼のもとで、自分のスケートを違う次元にもっていけるよう、頑張りたい、そう思いました。
ジェニファー:ニックスコーチは、あなたが、彼のファッションに手厳しいと記者会見で言っていました(笑)。実際、訓練を受けてみて、どんな方なのでしょうか。
アシュリー:はは。ニックス先生は、ほんと、素晴らしい方です。
なんといってもベルトや前ボタンのない、ゴムのジーンズを履いて、リンクにいらっしゃるってことからして、人の尊敬を集めますよ(笑)。
普段の練習ですが、先生にはスケート全般、特にジャンプを見てもらおうとお願いしていましたが、それより先生は、私に通しでプログラムを滑らせて、プログラムに磨きをかけることを重視されてました。観客にアピールすべき、ツボを大事にするように、強調されてました。先生いわく、観客がプログラムを理解すればするほど、ジャッジもそれと比例して、プログラムを評価する、とのことです。観客を引き込むことが何よりも大事で、そのために滑っているのだと。
先生の偉大なところは、どうすれば、ほんの些細なことが、大きな効果を生み出すかを熟知していることです。
あとは、私の演技を見てくれているときに、椅子に腰掛けて、両腕を広げ、顎を上向きにあげて、あたかも私が、オリンピックのフリープログラムの最後のジャンプまでクリーンに降りた、よくやったよ、って言わんばかりのポーズで見守っていてくれることですね。
一種のメンタル・ゲームなのでしょうが、それがすごく私にはよかったです。
それと、ニックス先生は小柄な方ですが、とても威厳があって、高い背もたれのある椅子に、呼ばれて話をされることがあったのですが、「君(Dear)。。。」って、感じで、緊張しました。
デビッド:部屋が真っ暗って本当ですか。
アシュリー:はい。
それと、先生はたぶん最初の2ヶ月は私の名前を覚えてなかったと思います。呼ぶときは、いつもDearでした。そのころ、一緒に練習していたコートニーと、アシュリーで名前がごっちゃになってました(笑)。最初の全米タイトルをとったとき、やっと、アシュリーって覚えてもらったのかなあ。でも、そうすると、コートニーのことまで、アシュリーと呼ぶようになって(笑)。さすがにコートニーも、試合で、先生にアシュリーと呼ばれて怒ってましたね。
デビッド:ニックスコーチについてのベスト・ストーリーは何ですか。
アシュリー:ううん、たくさんありすぎて。何だろう。あ、そうそう、ある日、練習が終わって、リンクの上にある先生のオフィスに呼ばれたときのことです。トントンとノックをしても、声がしなかったので、そおっと開けてみると、先生が、あたふた焦っていて、「アシュリー、君は僕がもう少しでパンツを下ろしているところを不意打ちしたな」って言うんです!「ええっ。先生、何でこんなところでパンツを下ろしているんですか。その理由を、私はシリタクナイ」とこっちも焦りました。
先生は、アロハシャツをゴムジーンズの中に入れようとして、一緒にパンツを下ろしてしまいそうになったのかな。
********************
(次に、ブラック・スワンについての話が続きます。)
デビッド:そのシーズン、あなたの他にもたくさんのスケーターがブラックスワンを演じました。タラリピンスキーとその話をしているとき、ブラックスワンを演じて気持ちをよくさせてくれたスケーターを1人挙げろといわれたら、それはアシュリーだ、ということでした。
多くの人が、このプログラムによって、あなたのスケートはまた一歩次の次元に進化した、と言っていますよね。このプログラムを演じるにつき、どんなところに力を入れたのですか。
アシュリー:最初、私がやりたかったのは、狂気のブラックスワンなんです。というのも、この音楽は、クラッシックの要素が濃いものの、そこに、エキセントリックなひねり、が入ってますよね。例えば、ガラスを割るところとか。そこは実は私はやりたかったんですよね。
ただ、フィリップ(振付師のフィリップ・ミルズ(Phillip Mills))は、この音楽について、クラッシックな捉え方をしていました。このプログラムを演じるにあたっては、こなさなければならないところがたくさんあって、ひねりである、派手な部分をこなす余裕はなかったので、最終的には、自分もクラッシックの部分を中心にすることに納得しました。
ただ、私たちは、観客が演技に引き込まれる瞬間を創り出そうと努力しました。その一つがスパイラルです。お客さまにはすごく受入れられたようです。最初、フィリップがこの振付を提案したとき、自分ではどうかなぁ、と半信半疑だったんですけど。フィリップはさすがそういうことを分かっていたのですね。
主人公の烈しいキャラクターを表現することが引き出せたのではないかな。素晴らしいプログラムに仕上げてくれました。
つま先でターンするところも、優雅に見えるよう私なりに頑張りました(笑)。お客さまにも喜んでいただけて、これが初めてじゃないかな。自分のプログラムとして、ジャンプを降りたということだけではなく、スケート自体を評価されたのは。それがとっても嬉しいです。
デビッド:スパイラルの話が出たところで、次の質問です。あの猟奇的な主人公ニーナのスパイラルの秘訣があれば教えてください。
アシュリー:ううん。。。秘訣ですか。難しいなあ。そうですね、心がけたのは、はっきりとした動き(シャープネス)かな。最初、自分では、「私は優雅なブラックスワン♪」って感じで滑ろうとしたんですが、フィリップが、「ダメ。君は気の触れたブラックスワン。気が触れたようにみせなければ」って言うんですよね。
そう、だから私は、映画サイコの中で流れる、あのキーキーする音、あれを思い出しながら滑りました。
(ジェニファー:私もあれ好き!)
アシュリー:そんな感じでやってましたね。あのシーズンは、二頭筋肉を綺麗に維持しつつ、スパイラルのときボディビルダーみたいに見えないよう優雅に見えるよう、そういったバランスにも気をつけていましたよ(笑)。
***************
(次にAlmost Girl という評価についての話が続きます。)
ジェニファー:ジョン・ニックスは、特にメディアに対してはなかなかの策士家として知られていますよね。彼のもとで指導を受けるようになってからは、あなたについて書かれているほとんどの記事で、あなたのことはalmost girl 、もうちょっとの女の子、と表現されていますよね。その表現はどこから来たの?あと、almost girlと呼ばれることで、もともと負け組み、ということでプレッシャーは軽くなるのか、それとも逆に、もはやalmost girlではなく、a girlになったという意味でプレッシャーは重くなるのか、どちらですか。
アシュリー:あれはたしか、NBCのインタビューだったかな。almost girlは、私が最初に自分で自分のことを指していいました。反響はすごかったですね。
実際、本当にそうなんですよ。あともうちょっとのところで、何回か、世界選手権の代表になった、あともうちょっとのところで、五輪に派遣してもらえた、タイトルとれるのではないか、と期待されつつ全米でもあともうちょっとのところで、チャンピオンになれない。そんなことで、almost な瞬間がたくさんありました。
全米で、勝てない。そうすると人は、やっぱりね、彼女はそういうもの、って認識されるんですよね。
ジェニファー:鼻持ちならない、なんてことは全然ないわよ。
あの全米では素晴らしい演技をしましたね。やっと優勝したときの感想はどのようなものでしたか。
アシュリー:どれだけのことを全米タイトルに賭けていたのか、全米優勝の瞬間までわかりませんでした。優勝できなかったら、スケートをやめようと決めていましたから。欲しいのは、2位とか、これまでもらったきたがんばりました賞ではない。自分は優勝するために全米に出場するんだ、そういう気持ちでした。
そして、自分が表彰台の一番高いところに登るんだと、分かった瞬間ですが。そのとき、抑えていた感情が、一気に解き放たれた感がありました。もともと自分は泣いたり、感情を表に出したりするタイプではないです。厳しい軍人の家に生まれ育ったことも関係してるかもしれませんが。
そんな私でも、全米優勝の瞬間は泣きました。はるばる遠いところまで家族と遠く離れて、あえて居心地の悪い世界に身を置き、初めての1人暮らしで、家族、友人、犬とも離れて生活してきた。それが淋しいとか、そういう気持ちは、全米タイトルをとるんだ、という目標の前に封印をしてきたのかもしれない。でも、優勝の瞬間、この一年間、どれだけ、この瞬間に賭けて来たのかを知り、今までの思いが堰を切ったように押し寄せてきましたね。
あと、嬉しかったことは、自分が毎やると掲げた目標を掲げて、毎日実行して来れたこと、こと。自分はそんなにダメな人間ではなかったんだ、今までの努力は無駄じゃなかったんだをそう思えたことです。
ありがとうございます!
ブラックスワンのサイコのあたり、本当に面白い!
あとは、ここ二年ね彼女のスケートに対する想いを感じました!
(訳抜けをしてしまいました。28のコメント欄の、ジェニファーの「鼻持ち」云々の前に、以下の訳がはいります。すみません。)
プレッシャーが軽くなるか、重くなるかについてですか?その両方あるような気がします。
ニックス先生、フィリップとも、全米選手権(2011-2012 )に関しては、私に万全の準備で臨ませました。競技を意識する以前に、自分の演技にとても集中していました。自分でも、持っている力を出し切りさえすれば、必ず、タイトルは持って帰れるだろうと確信していたくらいなんです。実際、それをやってのけました。そのくらい自信がありました。有言実行でした。鼻持ちならない、って言われるかもしれないけど、鼻持ちならない、っていうのは、言うだけ言って、実行しないってことだと思うんです。
JJさん、
こちらこそ、どうもありがとう。励みになります
アシュリーは、聞かれた質問に答えるときに、ユーモアを交えて、それでいて深く返してきますね!
ノートをとりながら聞いていますが、生き生きと話している言葉を訳していると、元気がでます。
これからも、よろしくお願いします
どうも。参考にさせていただいてますがあまり無理なさらぬように。
よく聞き取れなかったり聞けても意味がよく分からなかったり・・
普通と言うよりはかなり饒舌に話されるとわたくしはお手上げになりがちです。アシュリーってこんなに喋るんだね。
蛇蔵さん、
こんにちは。
私も楽しみながら、ちょっとづつやってます。仕事では、硬いもの訳すことが多いので、趣味でスケートインタビューを訳すのは面白いです。あと、表現とか、勉強になるところが多いです。
私は、結構長い間、アシュリーのファンをやっているのですが、ここまで、饒舌に、率直に話すのを聞くのは初めてで、びっくりしてます。
あ、自慢しちゃうと、初めて全米チャンプなった年、現地でサインもらって、写真を撮らせてもらったんですが、もの凄く気さくで、明るいお嬢さんだったんですよ。目が潰れそうになるくらい、綺麗で可愛いかったです。レイチェルもアリッサもですが、アメリカ女子、あまりに美しくて、感じがよくて自分が恥ずかしくなりました。
たしかに、聞き取りにくい部分もありますし、聞けても、意味が分からない部分ありますね。特にジョークなど、私は苦手なほうです。
でも、2、3日おいて、また聞きなおすと、ああそういうことか、ってハタとくることもあり、勢いよくノリノリで話しているアシュリーの話が、実は、論理的に流れていることに気づき、彼女は賢いひとなのだなーとか思ったりします。
これからもよろしくお願いします。
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荒らし・煽り又は禁止事項に接触するコメントを見つけた場合、掲示板の「要望欄」よりURL(アドレス)・コメント番号・投稿日時等を明記してご報告ください。内容を確認した上で、削除等など処置をいたしますのでご協力ください。
【禁止事項】
● 一般の方の個人情報(名前・住所・電話番号等)掲載
● マルチポスト
● 関連のないサイトからの広告・宣伝
● 自作自演・成りすまし・一つの記事内で複数の名前を使用
● スケート選手・ユーザーへの誹謗・中傷・批難
● 荒らし・煽り行為
● 罵倒及び明らかに他人を不快にする投稿
● 犯罪の予告などの書き込み
● 政治・宗教活動、勧誘行為. 触法行為