過去にミシェル・クワンやエヴァン・ライサチェック、現在グレイシー・ゴールド、デニステン、村上大介を指導しているフランク・キャロルコーチのインタビュー動画です。映像は「The Blade Boys」のYouTube公式チャンネルで公開されたものです。
過去にミシェル・クワンやエヴァン・ライサチェック、現在グレイシー・ゴールド、デニステン、村上大介を指導しているフランク・キャロルコーチのインタビュー動画です。映像は「The Blade Boys」のYouTube公式チャンネルで公開されたものです。
“エリック・ボンパール杯でフランク・キャロルコーチを直撃 (2015/12/1-英語)” への11件のコメント
厳しくもあたたかくて素敵です。
インタビューをまとめてみました。大意に影響ない部分は省略しています。間違いがあれば訂正してもらえると助かります。
T=テッド、C=フランク・キャロル
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ミシェル・クワン
T: ブレードボーイズのテッド・フレットです。尊敬すべき世界チャンピオンメーカー、フィギュアスケートコーチ、フランク・キャロル氏をお迎えしています。僕が初めてキャロル氏を知ったのは1996年。キャロル氏がミシェルを世戦チャンピオンに導いた年。ミシェルはタイトルを総なめ。翌1997年、連勝を期待された全米ではタラ・リピンスキーが優勝。ミシェルは特にルッツに苦しみ、ボードでキャロル氏とジャンプをおさらいしていました。あの大会を覚えていますか?もう十年以上前になりますが。
C: 大会の苛立たしさは覚えている。ミシェルの靴が酷い状態だった。優良メーカーで粗悪品ではない。ブレードが酷い角度にねじれてしまい着地の度に回転し転倒。全米で負けた。靴の修理ができなかったのだ。父親のクワン氏が今靴を変えてはいけないと主張したので。スイスの世戦で負けた後、やっと問題を認めた。何年かのち、何かの事情で練習用にその靴をまた履くことになった。その時ミシェルは父親に言った。「パパ!ありえない。こんな靴を履かせてたなんて!」あの一年間の問題は靴だったことにミシェルはその時気付いたのだよ。
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グレイシー・ゴールド
T: 試合では特に高難度ジャンプを緊張せず跳べるよう助言されているようですが、どんな助言を?
C: グレイシーは緊張すると体が硬直し、膝が曲がらなくなる。3Lzは跳躍の前に膝を曲げる必要があるが、グレイシーは曲がらずパンクしてしまう。ペンギンのように固くなる。だからジャンプの前に膝を曲げるよう繰り返し言う。あの子は感情豊かだから興奮しやすい。それを抑えて演技できるよう、感情面のコントロールが私の仕事。
T: 世界チャンピオンの参加を知って厳しいと思いましたか?他の選手を意識して練習に影響が出たりはしませんか?
C: ないね。あのレベルの選手になると自分のことだけに集中している。誰かを意識したりするのは弊害だ。ミシェル・クワンには他の選手を見せなかった。生徒には他の選手を見せない。自分のすべきことだけ考えて欲しい。結果は最後に出る。他人のやる事に気をとられてはいけない。弊害でしかない。
T: あなたはどうですか?
C: 私は周りのことは把握してる。スケート界で何が起こっているか、誰が何をどんなプログラムに入れているかを知るのは私の仕事。生徒にできない高難度の技を誰かができると知っていても、それを生徒に言う必要はない。言ったところでできるようになるわけじゃない。もちろん、知る事は私の仕事だが。
T: グレイシーはボストンの世戦で金メダルを獲ると言っていますが、その発言について。
C: 私ならそんな声明は出さない。だがボストンはグレイシーが子供時代を過ごした場所だからそう望んでいるんだろう。五輪出場は我々みんなの夢であり、目標を持つのは悪い事ではない。私なら声に出さず、自分の考えとして胸に納めておくが。
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T: 目標を声に出す事で覚悟が決まると思いますか?彼女の本気が他の選手へのメッセージになると?
C: グレイシー自身のプレッシャーになるのでは。発言したからには、どう実現させるのか。実現しなければ失望するのか。世戦出場が叶わなければボストンにさえ行けない。発言のもたらす残念な結果を考えると、私はあのような発言はしない。
T: 発言前に許可を得なかったって事ですね(笑)
C: いや、その必要はない。私はスケーターたちを洗脳したりしない。彼らには発言できる知的な人間であってほしい。正しい心と知性を持って。グレイシーがこうと考えたことならそれでいい。私の助言が必ずしも必要ということはない。
T: 今季のプログラムについて。SP「エル・チョクロ」、FS「火の鳥」。
C: ローリー・ニコルの仕事は見事だ。氷の振付け師として世界最高。これらプログラムは出色の出来。グレイシーにはぴったりだ。グレイシーから違う面が引き出され、自分を忘れて役になり切れる。タンゴダンサーになる時は、グレイシー・ゴールドである事を忘れている。火の鳥では自分を抜け出しバレエが生んだ架空の生き物の役柄に入り込む。
T: グランプリファイナル出場参加獲得が間近です。ファイナルに帯同するのが楽しみですか?
C: いや、特に。バルセロナは好きで個人的に何度も行ってる。シリーズファイナルに関しては何の意味があるのか考えてしまう。GPSから6人だけ選出されるファイナル。世戦は近いし。無くてもよい競技会だと個人的に思う。多分ISUがテレビ向けに作った大会じゃないかと。分からんがね。出過ぎた発言かもしれないが私はそう思う。
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T: アシュリー・ワグナーとはライバル関係にありますが、二人が比較されることについて。マスコミの煽りでしょうか?
C: 煽りだと思う。二人ともいい子だからね。お互い気持ち良く接しているし、認め合っている。アシュリーはタフな女子。リンクに立つアシュリーは全力で行くツワモノだ。グレイシーは芸術的で音楽的。スケートは似ていないし、スタイルが違うが二人ともいい選手だ。その日の調子にもよるが、比較という意味では二人は近い。
T: 近いですね。二人とも全米優勝者。今年のJOや去年の上海世戦では順位が前後してるし互角ですね。
C: 親しい人と一緒に滑るのはいいことだ。二人は対立関係にない。
T: 去年、アシュリーはFS後半にジャンプを入れ得点を稼ぎ、それが強さの一因でした。グレイシーは今季2A+3Tを後半に跳びポイントを最大限獲得する努力をしていますね。アシュリー対策ですか?
C: 違う。正確ではない。我々は音楽性を重視しているのだ。後半にジャンプを入れるべき曲じゃなければ、後半に入れる意味が無い。入れても芸術的でなければ、そのように構成点に反映すべき。ジャンプをどこに入れるかは音楽が決める。序盤にジャンプを入れるべき曲なら序盤に入れる。後半に詰め込むのは理解できない。ISUはつまらないFSルールを数多く作ったが、これはその一つだと思う。後半にジャンプを入れスタミナを見せるのは良い。トレーニングでスタミナを付けるのも能力。後半にジャンプを入れていないことは、構成点を付けるジャッジが気付くべき。その上で構成点に反映させればいい。規則で後半に点数を加算する必要は無い。ルールや規制ばかりでフリープログラムはもうフリーじゃない。セカンド技術要素プログラムと呼ぶべきだ。フリープログラムと言うが全く自由じゃない。
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(5)
デニス・テン
T: 今回はグレイシーの他に村上大介とデニス・テンもいますね。まずデニスから。スロー・スターターでシーズン終盤にピーキングの傾向が。GPSは気にしていないんでしょうか。特に必要ないと?
C: デニスは体、特に足に問題が生じる。靴に慣れるまでが問題。履いては、いつもいじっている。今年は大きな故障があり、今大会はそれを抱えたまま滑っている。スケートアメリカでもそうだった。早く回復して元気になって欲しい。デニスは苦しんでいるが、なんとかスケートを滑ることはできる。厳しい挑戦をしている。
村上大介
C: 彼はいい子だ。もの静かで言われたことはちゃんとやるし練習熱心。安定性が高く、最後までうまくプログラムを演じ切れる。ファイナル出場は喜ばしい。カナダ大会では五輪チャンピオンや世戦チャンピオンに次いで3位。よくやっている。嬉しく思う。努力家だからね。
T: 日本人選手のファンやマスコミは違いますか?
C: 嗚呼。私の苦労は想像もつかないだろう。毎週のようにフジテレビやNHKなどテレビ局や番組からダイスと一緒にスケートを語って欲しいと要請が来る。これが続くと嫌になるよ。私には仕事があるんだ。選手たちのコーチをしなくてはいけない。だがインタビューやテレビ出演の依頼がしつこくてね。日本では番組をスケートの話題で埋めるほど人気なのだろう。もう慣れたが。世戦ではボードにたどりつくのにテレビカメラと格闘だよ。
T: これが大介に影響しますか?
C: いや。言った通り、彼は気にしない。ダイスは静かで、ひとりを好む子だ。やるべきことをやる。何も彼を邪魔できない。すべきことに邁進するのみ。
T: 選手やジャッジングシステムについて、ご意見をありがとうございました。
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知的で厳しい面と、優しく選手を思いやる面を併せ持ったクールでホットなコーチだと思いました。歯に衣着せず語る所が好きです。
FSFさん、こんなに長い訳を…いつもながら、ありがとうございます。
キャロルコーチ、さすが大御所。ISUのルールに対しても 容赦なく思ったことをおっしゃいますね(^^;
TEBでは門下の3人と共に フリー中止の事態に巻き込まれ、大変だったことでしょう。
最後の 日本のメディアについての感想は、あぁやっぱり…と ちょっと情けなく思ってしまいました。
でも、そういうメディア攻勢から 教え子を守ってくれているのは、ありがたいことです。
年齢のこともあるし 他の要職にも就いているので、現在のトップ選手3人を最後に コーチ業から退くつもりだと たしか聞いた覚えがあるのですが…できれば いつまでもお元気で、フィギュア界に貢献してもらいたいものです。
ところで、最近 英語の動画でほぼ毎回 FSFさんが訳を入れて下さるので、とてもありがたいのですが、どうぞ無理のない範囲に留めおき下さいね。
いつも ありがとうございます。
翻訳うれしいです。ありがとうございます。
この年齢までトップ選手を育て続けてきたからこそ言える貴重な意見ですね。
過剰なメディアの煽りに選手が惑わされないか心配になる時もありますが、キャロルコーチのような人がいてくれたらきっと大丈夫ですね。
溌剌としつつも品があるキャロル門下生三人の演技とても好きです。
翻訳ありがとうございます!
FSF様、丁寧な訳をありがとうございます。いつもとても読みやすくて、動画と共に楽しませていただいています。
キャロルコーチ、選手には何よりも自己を大切にしてほしいと考えているのかな、という印象を受けました。ゴールド選手の「ボストンで金を目指す」発言も、彼女が目標と決めたから口にしただけのことだろう。本人へのプレッシャーにこそなれ、他選手への牽制ではない、という見方でした。でも、自分なら敢えて表明したりはしないが…と繰り返し言っていたのが、何だか可笑しかったです(*^^*)
拙訳がお役に立てれば嬉しいです。スケヲタの卵で、まだまだ勉強中です。みなさんのコメントを楽しく読ませて頂いてます。おー!ここに興味を持たれたんだ、ああ!こう訳せばよかったな、と。
Da Capoさん:
翻訳やタイピングにはそれほど時間がかかりません。でも、ハイ、無理はしません。他にも和訳をなさる方達がいらっしゃるし、気楽にやっています。お心遣い、ありがとうございます。
キャロルコーチは1939年生まれ。76歳で現役とは素晴らしいですね。これからもお元気でご活躍されますように。そして、言いたい事を仰って下さい(笑)。
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