無良崇人　全日本選手権2017　フリー演技　(解説：日本語)

佳菜子と無良の状況は違う。
佳菜子の場合、トップとの実力差が大きすぎた。OPも目指していなかった。大学卒業とともに引退するのは察せられた。自らがどれだけ良い演技をしても、宮原選手他に勝てないのはわかっていたし、だからこそ全日本で良い演技をして幕引きをしたかったように思う。FSだけだか願いが叶ってよかった。

無良選手の場合、３番手争いにとどまっていた。そして彼は4年前の全日本で『平昌OPを目指す』と公言していた。
全日本前からもう駄目だと諦めていたようには感じた。全日本でもその心境でいたのだろうというのはわかった。
順位決定後のインタで4Ｔをもう１回飛んでおけばよかったと話していた。後悔はないといいつつ、後悔があったんです。
彼は、半分は諦めていたかもしれないが、それでも半分はＯＰ出場を期待していたんです。

完成度の高い演技は五輪でやればよかったと思います。最高の舞台で最高の演技を。失礼ですが、彼の場合、結果は求められません。だからこそ全日本ではなく、五輪でするべきだったと思いませんか？ファンの方も彼の最高の演技を五輪で見たかったのでは？
その出場権のかかる全日本で、彼はすでに諦めてしまった。最高の演技をしてファンに恩返しがしたいという目標に心を落ち着かせたんです。
それは彼の弱さだと思う。五輪に出るための演技をして何が悪いのでしょう？結果として田中選手は五輪で良い演技をする資格を得られました。

だからこそ無良選手の演技には感動する点はなかったです。
心のどこかで諦めたんだろうと伝わる演技は、見ていて感動は得られません。（宮原さんの演技は五輪へ行くための演技だから、感動したんです。坂本さんのもそうです）
失敗しても諦めない演技（もちろんそれでノーミスならば素晴らしいですが）にこそ感動しました。友野選手、村上選手の演技も素晴らしかったです。
もちろんこれは私個人の意見で、ファンからすれば怒りしかわかないでしょうけれど。

正直ですね、4Sについてはもう入らないなと思ってましたね。というのは、シーズン序盤のアイスショーで、「4Sは入られたら入れていく」というようなコメントをしていたからです。新種四回転は「入れれたら入れていく」というような覚悟では入らない。それなら多分去年すでに入っていたから。
初戦と二戦目？こそ冒頭でためしていたけど、回転が抜けていたので、実践投入にはまだまだ厳しい完成度なのかな？と思いました。去年のパトリックもすぐには成功しなかったけど、回転は足りてた。あとは着氷のみという状態で、練習でも6、7割の成功でパトリックはシーズンを迎えてた。
ただ、そのパトリックも今季4Sを外しはじめたうえ、外した構成でもミスがでた。初戦のカナダ大会ですね。
フェルナンデスも四回転ループを示唆しながらも実践で試すことなく、今までと同じ構成のものがスペインの国内大会でもまとめきれてない。
世界的にトップの二人をみても、ここまで苦戦しているのをみると、年齢的にある種の転換期だったのかなと推測します。
ジャンパーのイメージがあるむらくんですけど、明らかにグランプリ二戦はジャンプの調子が良くはなかったし、全日本も絶好調とはとても思えなかった。
ショート、フリーで四回転を決めはしましたが、本来のクリーンな四回転とはやはり程遠かったと思うし、2本目は必ずコンビネーションにしないといけない。
コンビネーションにできる四回転を跳べる可能性は今季の状態をみても、今はかなり低いなと私は正直おもいました。
なので2本目の回避は私は理解できましたし、ある意味「懸命な判断」とおもいました。
技術基礎点で争うつもりなら、四回転2本目で必要なのは実はトウループではないと思ってます。やっぱりサルコウは欲しかった。四回転2本でもそれが二種の場合だったら、それぞれ単独で挑めば着氷はみだれてもリピートをくらうことはないし、なにより、三連続の三つ目を三回転に昇格できる。
三つ目のコンビネーションを三回転サルコウにできないのは地味に基礎点としては勿体ないと思っていたので。
ただ、2本目の四回転トウループのコンビネーションや四回転サルコウの成功率がむらくんにとってどのくらいのものだったのか、実際のところの練習での状態は私たちにはわからないし、ほんのちょっとの公式練習とかの状態から推測するくらいしかない。練習での状態と試合との兼ね合わせというのも、ただ見ているだけのスケート未経験者のスケオタでは正確な判断もできない。
村上大介くんも4Fは練習では七割着氷しているという話でしたが、「全日本で試すにはリスキーだ」といって今回外してきました。七割の着氷でもリスキーというのが守りなのか堅実な判断なのか、私にはよくわかりませんが、それぞれ自分のタイプをわかった上での判断なんだと思います。ちなみにプルが実践で試すには練習で8割成功しているときとも昔言ってましたね。
とくに今季はけが人が続出していることも考えると、高難度はやはりもろ刃の剣で、習得は怪我への危険との背中合わせ状態。怪我のリスクは若い選手よりやはりベテラン選手のほうが高いとも聞きます。私たちは気軽に「構成をあげないと」といいますが、実際はそんなに簡単なことではないのでしょう。
去年の男子シングルの状態を見てると感覚が麻痺してしまいますがね苦笑
誤解されては困りますが私は基本バリバリの高難度イケイケ脳です。少し無茶な構成のほうがトキメキます笑
ただ、「2本目の四回転トウループや四回転サルコウを今の状態でトライした」としたら逆にプログラムがぐちゃぐちゃになってしまった可能性も高くあり、高難度はトライすればよいわけでも勿論なくて、勝算がなければやはりそれは無謀なだけのもの。それはそれで、批判もでるでしょう。（実際その構成で挑んだシーズン序盤は正直ぐちゃぐちゃの状態になってしまったし、それでも素晴らしいというような賞賛のコメントはなかったと思いますが）
試合にタラレバは基本ないので、いっても仕方ないですが、ただ、この高難度時代がもっと前にきていたら、たとえばむらくんが10代のときにきていたら、また違ったりしていたのかな？とは想像したりします。